古豪気動車を操る~鹿島鉄道運転体験~後編
キハ431の車内には折りたたみのテーブルが据え付けられており、10時になり参加者が揃ったところで車内でオリエンテーションが始まった。ちなみにこのキハ431は加越能鉄道からやってきた経歴の持ち主である。

体験運転ができる車両は、その回によって新型のKR-500やディーゼル機関車のDD902、日本最古と言われるキハ600、夕張鉄道からはるばるやってきたキハ714のいずれかになるとのことで、今回の体験車両はキハ714であった。ここでもしKR-500だったらガックリきていたところだ。
簡単に説明を受けた後、いよいよこの車両から降りて、徒歩で検修庫をくぐり抜け、検査中のキハ602を脇に見ながらこの日ハンドルを握らせてもらうことのできるキハ714へと向かう。

まずはキハ714の周りをぐるりと回って足回りの解説を受ける。鉄板と板バネを組み合わせた台車が特徴的である。「菱枠形台車」というそうだ。

しかしハンドルを握って実際に動かすのはまだまだ。午前中のメニューは「練習」ということで、まずは車庫内に置かれた特製の運転台モックアップを使って運転操作のレクチャーを受けながらイメージトレーニング。関東鉄道のキハ350でも体験したことを伝えたら、話はスムーズに進んだ。

この車両もキハ350と同じような自動空気ブレーキだが、階段緩めができないのが大きな違いと教わった。・・・つまり微調整ができないってこと。これはちょっと難しそうだ。
モックアップでのイメトレが終わったら、今度は実車のハンドルを使って再び操作の練習。一番気になるブレーキの感触を確かめる。ちなみにハンドルは木製のレバーではなく、機関車の単弁のような形をした小さめの真鍮製で、初めて見る珍しい形をしていた。
そして、最後に指導運転士さんのお手本で実車を動かす姿を拝見。制動の扱い方はロクサン(の単弁)と同じで、3段制動、シリンダ圧1キロで止めるのが基本の様子。3回の操作で1キロぴったりに入り、そのまま停止位置にビシッと決まるのはさすがプロ。

午前中のメニューはここまで。再び、最初の集合場所であるキハ431に戻り、車内でお弁当を頂く。ロングシートでお弁当というのも今となってはなかなか巡り会わない体験だ。

午後はいよいよお待ちかねの運転体験。約200mの構内線を順番に1人1往復することができるのだが、関鉄と同じく構内を行ったり来たりしている間は乗り降りもできずに、揺りかごのなかでひたすら揺られるしかないので、待ち時間はいささか時間を持て余してしまい、お腹も満たされてウトウトしていた頃、私の番が回ってきた。

実際にノッチを入れてみると、1ノッチでギアが繋がって動き出すまでに結構タイムラグがあり、キハ350よりもっとメカニカルな印象を受けた。ギアが繋がる前にノッチアップをしてしまうとガガガと大きな音を立てて文句を言ったりと、自分が操作していることを肌で感じられるこの感触が旧型車両の醍醐味だ。
肝心のブレーキ操作は、私はロクサンの体験運転でもついブレーキが遅れる傾向があるとおり(ぉぃ)、今回もオーバーラン気味に。ATS地上子まで余裕は5m程度しかないので一瞬ヒヤッとしたりもしながら、往復無事終了。終わってみればあっけないけど満足満足。

関東鉄道でもそうだったが、今回も指導してくださった方が親切であったことはもちろんのこと、体験運転が行われている間、構内の3箇所の踏切には3人の係員がずっと張り付いて安全を確保してくださっており、時期的にも決して余裕のあるとは思えない中、こうした鉄道を身近に感じられるイベントを最後まで続けられている姿勢に本当に頭が下がる思いだった。
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