« May 2012 | Main | October 2012 »

August 2012

大人の社会科見学~黒部ルート見学会のたび④~

ここの会議室で黒部における発電の仕組みや工事の経緯の説明を改めて受けます。

20120730kurobe29

黒部ダムというと、あのダムの下で電気をつくっているように思ってしまいますが、実際に電気を起こしているのはダムから10kmも離れた地下深くにつくられたこの発電所。ダムからここまで送水管で水を落として、さらにその水は下流の発電所に順繰りに回されて、何度も再利用されているとのことです。

時節柄電気のこと、ことに関電さんのお話ですから、聞く方も自然と聞き入ってしまいます。ただ、会社としてはいろいろあるでしょうが、関係者が黒部にかける思いに関しては本当に脱帽する思いですし、現場で働いている方は一生懸命です。我々にも大変親切に対応して頂き、大変だなと思うばかりでした。

そして、発電機のある吹き抜けへ。

20120730kurobe30

体育館のようながらんどうの空間に、4つのパンケーキのような物体がちょこんと並んでいるだけの空間です。いささか拍子抜けですが、発電機の大きな本体が床下に隠れており、そこで水力で回されたタービンにより強力な電力が生み出されているのです。

20120730kurobe31

しかし、何度も言うようですが、ここは山の中。そしてスケール感がおかしい。こんな構造物がもう50年近くも前に完成していたかと思うと、エヴァンゲリオンのジオフロントだって、そのうち現実のものになったっておかしくないような気がしてきます。いや、それくらい当時の技術力はすごいと改めて思いました。

コントロールルームや、下のフロアで猛回転している水車と発電機をつなぐシャフトを見せて頂いたりしながら、発電所の見学は終了。

そして最後の大物、ケーブルカーの大型版、インクラインに乗車となります。トンネルの巨大さにそのスケールがおわかりになりますか?

20120730kurobe34

急傾斜のコンクリートのトンネルがひたすら続いている様は、これまたエヴァの射出口とかカートレインなどを思い起こさせます。

20120730kurobe35

ケーブルカーと同様に釣瓶式になっており、途中でもう1台の車両とすれ違います。向こう側の車両には黒部ダム側からの見学者が乗っており、一瞬の出会い。

20120730kurobe36

乗車時間は20分に及ぶことから、途中で中島みゆきの紅白出場DVDが上映されました。これ、私も生で見てましたから懐かしい映像でした。しかし歌詞の間違えをこうも後世までひっぱられるとはちょっとお気の毒です・・・。自分のコンサートでさえクチパクだったり、モニターで歌詞を出したりする歌手も当たり前なのにねwww

インクラインを降りると、いよいよラストスパート。送水管に沿って10kmに及んで伸びるトンネルをバスで黒部ダムへ向かいます。

20120730kurobe37

ここでも途中、樽沢の横坑で小休止。

20120730kurobe39

バスを降りて横道にそれて歩いていくと、まぶしい外の光が見えてきました。

20120730kurobe38

正面に剣岳。これが見られる日はなかなかないとのことで、この日も最初は雲に覆われていましたが、一瞬サーッと雲が割れてその姿を表しました。

20120730kurobe40

最後にこんな思わぬサプライズがありつつ、バスはトンネルの突き当たりに到着。

20120730kurobe41

正面は扇沢方面へのトロリーバスが通っているトンネル。遮断機で関係者専用の道路と明確に区別されています。

20120730kurobe42

以上で見学コースは終了。

トロリーバスの駅で一団は解散となり、展望台への階段を上ると、そこはたくさんの観光客が記念写真を撮っているよく見る黒部ダムの光景。まるで異次元の世界から戻ってきたような感覚を覚えました。

20120730kurobe43

ようやく黒部ダムに到着したという開放感とともに、この山の中で繰り広げられている日常、そして私たちが普段当たり前に使っている電気を生み出すために働いている技術屋さんには、改めて素直に感服せずにはいられないのでした。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

大人の社会科見学~黒部ルート見学会のたび③~

竪坑エレベーターを降りた先で、いよいよ上部軌道に乗り換えます。本来は関電の関係者しか使わないところですが、見学者向けにきちんと案内板が整備されています。

20120730kurobe18

また、工事用列車といえどもダイヤも決まっており、停車場所には駅名もつけられ、こんな地底でごく一部の人しか知らない鉄道が「運営」されているのは不思議な感覚でした。なお、トロッコだけではなく、この先のインクラインやバスに至るまで、乗り物はすべて決められたダイヤで運行されているようでした。

20120730kurobe19

この上部軌道は「高熱隧道」にも描かれている高熱地帯をとおるため、客車も耐熱仕様の特別な車両が投入されています。こんなマッチ箱のような客車でもそのお値段は1千万単位らしい。

20120730kurobe20

客車は極狭。確か座席定員は11席で、かなり息苦しく感じます。そしてワイパーは手動式。電動にしても硫黄でダメになってしまうためだそうです。

20120730kurobe17

機関車はバッテリーカー。これも高熱地帯を通るため、安全上の理由で架線を通すこともディーゼルにもできないため、バッテリーで運用しているとのこと。

20120730kurobe22

この先入っていくトンネルにはうっすらと霧がでていて、怪しげな雰囲気。みんなでワイワイいるからいいようなものの、ひとりだったらかなり不気味な空間です。。。

20120730kurobe21

ここから暗闇の地底のトンネルをひたすらゴトゴトと揺られていきます。その間、車内では案内をしてくれている関電の社員さんから写真を交えながら先人達の苦労が忍ばれる工事の経緯の説明があり勉強になりました。

そしていよいよ工事の従事者を苦しめた高熱地帯を通過。いまでは導水管も通っているものの、それでも40℃くらいはあるそうで、客車のドアを開けてもらうと硫黄の臭いがプーンと漂ってきました。

高熱地帯を抜けると、区間中、唯一地上に出る仙人谷駅で小休止。

20120730kurobe24

地上に出る、というより谷を渡る橋の上です。

20120730kurobe27

目の前には仙人谷ダム。この見学コースに参加しない限り、よほどの登山好きでここまで登ってくることができれば別ですが、まず見ることができないダムです。

20120730kurobe26

なんだか、丸ノ内線の御茶ノ水駅で一瞬外の光を浴びる、そんな感じですね。

20120730kurobe25

ふたたび地底のひとに戻ります。今度は紅白における中島みゆき生中継の裏話を聞きながら、列車はようやく黒部川第四発電所に到着。

20120730kurobe28

| | Comments (0) | TrackBack (0)

大人の社会科見学~黒部ルート見学会のたび②~

受付を済ませて、ヘルメットを受け取ったらいよいよ「関係者」におじゃま虫です。

20120730kurobe10

工事用列車に変身した車両に乗り込み、ここで終点のはずの欅平からその先に伸びるトンネルに向けて出発。

20120730kurobe11

この列車には竪坑エレベーターの乗り場まで移動するために乗車。数百メートル走ったところでスイッチバック。

20120730kurobe12

ほどなく竪坑エレベーターの乗り場の目に前に到着します。

20120730kurobe13

ここで、普通のトロッコとはお別れになります。

20120730kurobe15

黒部への上部軌道は、この竪坑エレベーターで昇った先から伸びています。つまり、1本のレールで結ぶにはきつすぎる高低差をエレベーターで結ぶことにより解決してしまったということ。エレベーターの中にまでレールが敷いてあって、トロッコも乗せられるようになっています。この地底空間でそういう発想が出てくること自体がすごいと思うのですが、しかも着工が昭和12年と聞いて、二度びっくりですよ。

20120730kurobe16

| | Comments (0) | TrackBack (0)

大人の社会科見学~黒部ルート見学会のたび①~

黒部ダムといえば言わずとしれたアルペンルート、そして黒部峡谷といえばトロッコ電車が有名ですが、そもそもはダムと発電所建設のために整備された工事ルートを一般開放しているもの。風光明媚な路線に多くの観光客が集まりますが、その裏ではいまも地下深くで稼働している発電所の維持管理運営のために、関係者専用の移動ルートが存在しています。

「関係者専用」とかいうコトバを聞くとついつい覗きたくなってしまうのは健全な証拠(?)。そんな願望を叶えてくれるべく、関電・富山県が毎年見学会を開催しています。

「黒部峡谷は、宇奈月~欅平間を運行する黒部峡谷鉄道を通じて、皆さまに親しまれてきております。―方、欅平から上流の黒部ダムに至る輸送設備(黒部ルート)は、関西電力の発電施設の保守・工事用として使用しておりますが、多くの方々に水力発電事業を理解していただくため、『黒部ルート見学会』として皆さまをご案内することとしました。」(~見学会の案内ページより~)

前々から応募したいと思いつつ、今年こそはと思って応募してみたところ・・・

20120730kurobe01

見事こんな書類が届きました!この見学コースは抽選制で、以前は倍率10倍を超えることもざらだったようですが、最近は応募も落ち着いているのでしょうか。それでも3倍超のところ、一発当選。ラッキー♪

当選したルートは欅平からスタートして、高熱隧道、黒部第四発電所を経由して黒部ダムに至る欅平コース。

朝9時20分に欅平駅集合ということなので、前泊が必須。宿は宇奈月温泉に取りました。部屋からは出区作業のトロッコが見え、朝からテンションが上がります。

20120730kurobe02

まだすがすがしい朝の空気の中、トロッコ電車の宇奈月駅へ。

20120730kurobe03

見学会の事務局ではトロッコ電車の席も予約してくれています。ただし、黒部ルート自体は無料ですが、ここは自腹。

20120730kurobe04

宇奈月を出ると、トロッコはすぐに黒部川に沿って走ります。欅平まで1時間20分かかり、景色の変化に富んでるわけでもありませんが、飽きることはありませんでした。

20120730kurobe05

途中、鐘釣で列車交換。しゃれっ気のないオレンジ一色で厳つい顔をした機関車が、普通の観光鉄道とはひと味違うことを主張しているようです。

20120730kurobe07

山肌に張り付くようなところにある欅平駅に到着。

20120730kurobe08

長細い1面のみのホームで、前後で乗降者を分けたり、ホームの途中に機回し用のポイントがあったりと、なかなかアクロバティックな運用をしているところにそそられました。

20120730kurobe09

ここで見学会の受付し、お待ちかねの見学コースへと突入します。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« May 2012 | Main | October 2012 »